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日記210325

 出勤のために電車に乗ると、車内はいつもより混雑していた。電車が駅を出発する直前、出入口いっぱいまでひとが詰まった車両にさらにひとり乗り入れてきて、ここからまだ乗り込めると思える気の強さに感心した。いざひとが入ってくると、車内出入口付近のひとたちはわずかに保っていた空間を埋めるようにさらに身を寄せ合い、意外とすんなり追加一名分のスペースができてしまう。出発の時刻がきて、扉が閉まり、出入口前のひとたちは扉に寄りかかり、またわずかにスペースが生まれて、周辺のひとたちは立ち位置や身体の向きを微調整し、ひととひととのあいだに少しだけ余裕ができる。上京したての頃は驚いていた満員電車も、いまではすっかり作法を身につけ、何事もなく適応している。
 笹塚で京王線から都営新宿線へと乗り換える。空席があったから着座して、本を開く。新宿三丁目辺りでまぶたが重くなり、手に持つ本の読みかけのページに人差し指を挟んだまま眠ってしまう。九段下に到着して目を覚まし、本をリュックにしまって降車した。身体の重さを感じ、頭はぼんやりする。身体をしゃっきりさせたいと思ってローソンでリポビタンDを購入し、その場で飲んだ。
 カフェインが効いたのか午前中はまともに労働ができた。午後は眠かった。一日中まともに起きて活動を続けられないこの身体を改善する手立てはあるのだろうか。利尿作用のせいかやたらとトイレが近い。身体の反応はあきらかにリポビタンDを反映している。しかし眠気だけはどうにもならない。眠気を抱えたまま勤務を終え、眠気を抱えたまま電車に乗った。朝から眠気を抱えつづけている。いつものように車内で本を読む。新宿に着き、目の前に座るひとが降車して、空いた座席に着座し、また本を読む。しかし即座に文字が頭に入らなくなり、電車に合わせて揺れては遠ざかろうとする意識の先で、ひとの出入りや車内アナウンスにかすかに触れつつ、いつのまにか眠りに落ちたようだった。耐え忍んだ眠気が昇華されゆくその最中の、とてつもなく心地よかった感覚を残した身体を起こし、調布で電車を乗り換えた。
 府中に着き自宅へ歩を進める途中で、家賃の振り込みを忘れていることに気づく。

カテゴリー: 日記