駅前のドトールで読書をする。隣の席に、高齢の男のひとが腰を下ろし、すこしの間をおいて、注文を済ませた配偶者と思しき女のひとが、頼んだドリンクをもってやってくる。手に持っていた二人分のドリンクが載ったトレイを机の上に置くとき、一方のグラスが倒れて、アイスコーヒーがこぼれてしまう。店員は床を拭いたあと、新しいアイスコーヒーを手に老夫婦の前に現れて、中身が半分ほどこぼれてしまったグラスと交換したのちに、女のひとといくつか言葉を交わす。
──お召し物は汚れてませんか?
──大丈夫、大丈夫。
──染みにならないとよいのですが。
──気をつけて持ってと言われたのに、さっそくこぼしちゃって。
──わたしもたまにやっちゃいます(笑)
──あらそう(笑)。ごめんなさいねえ、すぐに帰りますから。
──いえいえ、どうぞゆっくりしていってください。
店員がカウンターへと戻り、飲みものをこぼしてからずっと慌てていた女のひともようやく落ち着く。岩成達也『私の詩論大全』を読みながらメモを取る。筆記時に小さな机がガタガタと揺れる。ノートに書かれた文字を見て、じぶんでも読めないなと思う。一時間ほど居座って退店し、無印良品でレトルトのグリーンカレーを、成城石井で三本のビールを、それぞれ購入する。夜、ビールを飲みながら、ゲンロンカフェの配信イベント「さやわか式☆ベストハンドレッド2020」を見る。五十九位で、テレビ大阪で放送されている「ねじの世界」という番組が紹介される。「ねじの世界」は、芸人の中川家が町工場社長コントをしながら関西圏の町工場でどんなネジをつくっているかをVTRで紹介するという六分程度の番組で、ねじだけでなく、町工場の社長が昼食の蕎麦をどう食べているか(一味唐辛子を蕎麦に直接かけるらしい)などの誰の得にもならない社員の情報も併せて紹介するのがお決まりのようだ。百個のコンテンツが紹介されたなかで、なぜか「ねじの世界」の印象がもっとも強く残っている。
日記210417
カテゴリー: 日記