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日記210609

毎度のごとく気づけば言葉を発する機会から遠ざかり、かぎりなく音のみに接近した声ばかりが宙に埋もれる。近くにあった文章を音読する。小説を読む。現代詩を読む。論文を読む。利用規約を読む。文字に居心地をよくした言葉をドアのそとにひきずりだす。頭蓋骨が震える。句読点や改行の挿入が準備するひと呼吸。見慣れない読み慣れない文字をイメージで発音する。血液が脳に循環する。近くの小学校から聞こえるリコーダーの音の群れのした、教師がドレミファソラシドで歌っている。音楽をかけると金属を叩き、弾き、擦り合わせ、押しこんだみたいな硬い音が鳴る。周辺で細かなノイズが散っている。曲が終わるとゴミ収集車が近づいていた。
買ったばかりのコーヒー豆で淹れたコーヒーの甘さに驚いて、午前中に干した洗濯物が昼過ぎにはほとんど乾いていたことにまた驚いた。その一、二時間後に昼寝をする。目を覚ましてドラッグストアへ。あれとこれとそれを手に取ってレジへ向かうくらい簡単にあれとこれとそれを整然とさせつつ貫通させられたらどれだけ楽か。容器包装プラスチック用のごみ袋を買おうと思ったときはいつもほしいサイズが売り切れている。自宅に戻る途中の空の青さに雲が伸びていたからiPhoneのレンズを向ける。カップラーメンにお湯を注ぐ。ペプシコーラの栓を開ける。一発だけ思い切りぶん殴られたみたいな地震。地震くらいしか殴ってくれない。あとは虫。デカイ虫。デカイ虫に驚いて何もできなくなることの麗しさ。耳周りで伸びた髪の毛が不要な気がしたからすきバサミを箱から取り出す。肩周りに髪の毛が溜まる。浴室に髪の毛が散らばる。どこもかしこも散らかっている。あすも暑くなるから水分と塩分をこまめに補給しましょうねと動画の音声。

カテゴリー: 日記