ゲンロンカフェで小川哲さんと佐藤究さんの対談イベントが行われると告知が出ていた。『地図と拳』はまだ買っていないし、『ゲームの王国』は上巻しか読んでいない。『テスカトリポカ』も読んでいなければ、佐藤究さんの短編集が出ていることをこの告知で知った。だからこのイベントが楽しみに感じられるといっても、いま国内のエンタメ小説を代表するふたりの作家の名前のみに反応しているだけだといって間違いではない。とはいえ、小川哲さんが登壇しているトークイベントを何度かみたことはあって、あまり自作の話はせずになんか飄々としゃべってる小川氏の佇まいはけっこうおもしろい。いつも自作について懇切丁寧に話すようなことはないから小説を読んでいる読んでいないはじつはあまり関係がないようにも思う。おもしろいものをつくっているとうわさのひとらがトークをするらしいからたぶんおもしろくなるでしょうというおおざっぱな期待を抱えでもしなければまともに生活だってやっていられない。何かをたのしみにすることに関しては浅すぎる雑すぎるくらいの感性のほうがきっと得られるたのしみも増えるはずだよ、とじぶんに言い聞かせたい。そういう甘えを巧みに使うことができたのなら、へんな苦労も減ったことだろう。わざと利き手と逆の手で文字を書くみたいなことを好んでやっても喜ぶのはじぶんだけで、じぶんすら喜んでいないなんてことだってざらにある。ところで小川哲といえば、先日「小説トリッパー」に掲載されていた「君のクイズ」という中編小説がおもしろかった。クイズプレイヤーの思考法をなぞらえるようなお話の展開、主題されるクイズがそのまま見出しとなるようにお話を呼び込む構成、クイズ大会でのできごととお話としてのミステリの仕掛けとの並行関係等々、有機的に積み上げられた構造の妙が随所で感じられるうえ、部分部分のお話も素朴におもしろくついぐいぐい読み進めてしまう、読みごたえがありつつとても愉快な小説だった。「君のクイズ」に覚えた感動の勢いで、読んでいなかった『ゲームの王国』下巻も『魔術師』も『ユートロニカのこちら側』も『地図と拳』とあわせて買ってしまおうかと思っていたが、どれもまだ買っていない。ほかの本を買いながら、またべつの本を買おうかなと思っているありさまで、できればこの夏にはせめて『ゲームの王国』下巻くらいは買って読み終えてしまいたいところではある。なんなら読まずとも買って積んでおくだけでも決意したことを成し遂げた感は得られそう。
日記220713
カテゴリー: 日記