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カテゴリー: 日記

日記210225

からだじゅうで生まれてまもない鳥たちが鳴きわめいている。未熟な羽は猛りたち、ちいさな砂や擦り切れた草や頼りない木の枝がめざまし時計のベルみたいにおどろく。親鳥が還る気配はなく、どこへ行ったのかもわからず、いるかどうかなんて

きかないでほしい
名前を 誕生日を
けさの朝食を
思い出の場所や、手放したくないことばを
もうなにかであるふりなんて

駅のホームで
しらないだれか、あるだれかが
体液を吸いとられたみたいにぐったりとたおれていて
ひとりの駅員と
ひとりの同行者と
たまたま近くに居合わせたらしいひとりのだれかが
介抱している 舞台のそば
数メートル先の車内で眺めている窓に
潜んでいる顔

時刻ぴったりにドアが閉まり
電車が出発して
座席のうえに残された紙屑
の居心地の悪さに雲隠れする

固く閉められていた蛇口が
ぷつりと弛んで
ビリジアンの顔料が染める空に
溺れてしまいたい

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日記210224

きのうのあたたかさがいなくなって
うらやましいと
ポケットのなかで、手が
今朝みた夢をひきずっている
コートのうえから三番目のボタンが転がった
三年前のあの日から
行き場を探す糸が
宙吊りに
観覧車のうえから呼んで
このまま担架で連れ去って

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日記210223

スーパーのそとでじてんしゃが倒れていた
つめたい風が吹いていて
道ゆくひとたちが
ちくちくする皮膚に耐えている
わたしも
早足で帰路につく
マフラーに顔をうめて
どうでもいいことを きり捨てて

かなしいと笑っている

わたしが生きているという
世界にとってあまりにどうでもいいことが
わたしにとって
とてつもなく重大であると思えてしまうことの切れ目
陸地から
とおくはなれた海のまんなかで
ばたばた とあわただしく
溺れているわたしを
ひとりぼっちにして、

くるしいと笑っている

やがて、疲れはてて
許されたような気になって
校庭にちらばった宝石を ふみにじりたくなる
あともどりできなさへの渇望を
どうにか穴に うめている
夜に
空腹感が、腹立たしかった

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