日記210225

からだじゅうで生まれてまもない鳥たちが鳴きわめいている。未熟な羽は猛りたち、ちいさな砂や擦り切れた草や頼りない木の枝がめざまし時計のベルみたいにおどろく。親鳥が還る気配はなく、どこへ行ったのかもわからず、いるかどうかなんて

きかないでほしい
名前を 誕生日を
けさの朝食を
思い出の場所や、手放したくないことばを
もうなにかであるふりなんて

駅のホームで
しらないだれか、あるだれかが
体液を吸いとられたみたいにぐったりとたおれていて
ひとりの駅員と
ひとりの同行者と
たまたま近くに居合わせたらしいひとりのだれかが
介抱している 舞台のそば
数メートル先の車内で眺めている窓に
潜んでいる顔

時刻ぴったりにドアが閉まり
電車が出発して
座席のうえに残された紙屑
の居心地の悪さに雲隠れする

固く閉められていた蛇口が
ぷつりと弛んで
ビリジアンの顔料が染める空に
溺れてしまいたい

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