春寒し弾む烏のあしおとと
朝、家を出ると、黄色い旗を持ったひとたちがあちこちに立っていた。旗の動きに誘導されて、集団登校するこどもたちが道路を渡っている。自宅のちかくには小学校があり、この時間はいつも、こどもたちが列をつくっている。見慣れた光景を見守る任務を背負って現れたPTAのひとたちの春らしさを裏切るように、きょうはずいぶんと寒い。辺りを見わたすと、通学路の見守りをしているのは、みな女のひとのように見えた。革ジャンを着たひとの、ポケットに手を入れながら肩をすぼめる姿を横目に、駅へ向かう。途中の十字路では、今度は府中交通安全協会と書かれたベストを着た男のひとたちが、おなじように黄色い旗を振りながら、自動車や歩行者を誘導していた。
労働をおえて、駅へ向かう道中に、若者の集団をたくさん見かける。若者たちは、折り目がまっすぐ引かれた立体感のあるスーツを揃って着ていた。にぎわいの傍らを通りすぎながら、東京都庁に入庁したときの、新規職員研修がおわったあと、飲み会へ向かう準備をする同期のひとたちから声をかけられないように、早々に会場を後にした記憶を思い出す。東京都職員だったころ、職場で知り合ったひととまともにひと付き合いをしたことがなかった。退職してからも、当時の知り合いと会う機会は一度もない。勤務先のひとたちとの付き合いがないのは、いまもかわらない。
キャベツを買おうと思いスーパーへ寄ると、豚こまが安く売られていて、今晩も焼きうどんにするかと思い、買った。ここ一週間ほどは焼きうどんばかり食べている。会計に並ぶ前に、きのうの日記で、コーラを買えばよかったと書いたことを思い出して、飲料売り場に向かった。