昨年にSoundCloudにアップロードした不可思議/Wonderboy「世界征服やめた」のコピーがたまに再生されている。ラップがうまいわけではないし、録音環境も整っていないから音も割れてるし、後ろで流れている曲は他人の音源だから著作権的にたぶん黒だし、再生してくれているひとに申し訳ないと思いつつ、それでいて、どこの誰かもわからないそのひとに、一緒に世界を征服しにいかないかと声をかけたい気持ちにもなる。
もしも誰かが
「世界を征服しに行こうぜ」って言ってくれたら
履歴書もスーツも全部燃やして
今すぐ手作りのボートを太平洋に浮かべるのに
こういう日に限ってお前からメールは来ないんだもんなあ
──「世界征服やめた」不可思議/Wonderboy
もしも誰かが、ときっと誰もが思ってる。そんな気がする。
もしも誰かが怒りを表明してくれたら。
もしも誰かが悲しみを嘆いてくれたら。
もしも誰かが運動を起こしてくれたら。
もしも誰かが見過ごされている悪を指摘してくれたら。
もしも誰かが無知ゆえの愚かさを叱責してくれたら。
そんな期待を抱きながら、しかしその誰かが現れることはない。誰かが願いを叶えてくれることなど到底なく、何かを引き起こしたければ、見えない誰かに担わせようとしているその役割を自ら先立って担っていくしか手段はない。