朝方、自分のなかに吠え声が聞こえ始めた。一度など興奮や気弱さや困惑のために数語書こうとしているからだが、しかし許されうるそして解放をもたらすような材木を調達するのは、ある冬の闇夜の五時まで工場で働き、まだいくらか血のついた指で掘り起こしているぼくの存在の根底まで、あきらかにぼくの関係に長引くひび割れをもたらすことなく部屋から出ていけるかどうか、ぼくはまったくじしんがなかった。
(この日記はマックス・ブロート編『決定版カフカ全集7 日記』(谷口茂訳、新潮社、一九八一年)で使用されている語句の引用・組み替えによって作成しました。)