やわらかな時間が流れ、日常の中で言葉を探る。一瞬の視線が物の表面に触れ、その奥行きを試みる。指が滑らかにページをめくるたび、目に見えるものが輪郭を持ちながらもその先を隠しているように感じられる。
部屋を整えるとき、ふと机に置かれたコップの縁が目に留まる。そこに宿る質感は、何度触れたとしても言葉に尽くせない。触れるたび、表面に刻まれた痕跡がわずかに変わり、それが時間を含むという事実に気づかされる。
話の中で、ふたりの感覚が交錯する場面を思い出す。言葉が人から人へと移るたびに、それはまるで別のものへと変化する。その変化がどこに宿るのか、問いながらも確信には至らない。ただ、言葉が触れた瞬間、その言葉が形を持つという感覚は確かだ。
夜の窓辺で手を伸ばし、指先に空気の冷たさを感じる。ふと目に入る影や光の移ろいは、物そのものが持つ特性ではなく、自分がどの位置にいるのかを示しているように思える。その場所が、かたちを変えては私を包み込む。光と影の境界が曖昧になるたび、そこにある縁が浮かび上がる。
ページの中に潜む言葉が触れてくる。その言葉の配置が、視線を誘い、読み手の記憶をくすぐる。そのくすぐりは、誰にも教えられなかった肌理の秘密をそっと開くようなものだ。それは一方で、読者の意識を突き放し、物語の中に新たな縁を作り出す行為でもある。
コメントを残す