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日記210703

 ドトールで読書をしていると、近くの席に大きなリュックを背負った老人が座った。老人はリュックを下ろすと、カウンターからセルフサービスの水を持ってきて、無料の求人誌を読み始める。ドリンクの注文はしていないようだった。注文なしに店を利用することは原則許容されることではないはずだが、おそらくあまり仕事もなくお金もないその老人のような状況のひとがこっそりと席を借りて安堵を得ることがなんとなく見過ごされるグレーな部分はいいなと思う。ルールやマナーに忠実に、生真面目に振る舞おうとすると、グレーな部分で生活をするひとらは排除される。人間や人間の暮らしは多様であり、ひとは生き続けることでその在り方を更新するから、一旦引かれたある平等さはどこかで生きづらさを生んでしまう。だからある問題を制度の改変で解決しようとするだとか、あるひとの人格や暮らしを制度上認めさせるだとか、そうした公的な承認はひとびとの権利を守る上でかならずしも必要ではなく、私的な範囲で守られているものを守り通すという手段も一方ではあるのだろうと思う。公的なものがどうであれ自分らの場所は自分らで守る、という気概も馬鹿にできないのではないか。

カテゴリー: 日記